相続不動産だからこそ気をつけたい井戸物件
相続した実家の売却を進めていく中で、
というご相談を、これまで数多くいただいてきました。
古い井戸は、昭和に建てられた住宅や、水道が普及する前の地域では珍しくありません。しかし、いざ売却の段階になると、井戸は思わぬトラブルの火種になります。「埋め戻しをせずに売ってしまい、後から買主とトラブルになった」というご相談も、実際に少なくありません。
この記事では、相続不動産に井戸がある場合の注意点を、「埋め戻しの必要性」「契約不適合責任」「心理的瑕疵」という3つの観点から解説します。相続不動産の現場で沢山の不動産に携わってきた経験をもとにお伝えします。
先ず井戸そのものは、法律で必ず埋め戻さなければならないと定められているわけではありません。しかし、放置すると次のようなリスクが生じます。
蓋が木製や簡易なコンクリートの場合、経年劣化で腐食し、人や重機の重みで陥没することがあります。特に小さなお子様がいるご家庭に売却する場合、転落事故のリスクは看過できません。
井戸は地中に空洞が続く構造です。適切に埋め戻さずに放置すると、将来的な地盤沈下や、建て替え時の基礎工事に支障が出ることがあります。
使われなくなった井戸に雨水や汚水が溜まると、悪臭や害虫の発生源になることもあります。
父親が暮らしていたという家の売却で、相続人様は売却する家について詳しいことは分かっておりませんでした。不動産売却の委任をいただき、調査で現地に入ると家の裏手に少し大きいマンホールらしきものが。大きな蓋を開けてライトを照らしてみると底には水が溜まっていたので間違いなく井戸でした。相続人(所有者)様はご存じありませんでしたが、比較的わかりやすい形状をしていたので販売前に発見できました。
「昔、井戸を埋め戻したけど問題ないだろう」と告知しなかったケースです。10数年前に古い井戸の埋め戻しをしてその後は庭として利用されていました。引き渡し後に告知をしなかったことが災いとなり、買主様が住宅を建築するのに土地を整備していると土地の一部が陥没。ことの状況を売主様に告げると井戸の埋め戻しの話が出てきたという事例です。
2020年の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。そして、「井戸」自体がどのような契約不適合責任に該当するのかをご説明します。
井戸で問題になりやすいのは、次のようなケースです。
- 井戸の存在を知りながら、重要事項説明書や契約書に記載しなかった
- 「埋め戻し済み」と説明していたが、実際には不十分な埋め戻しだった
- 売主自身も井戸の存在を知らなかったが、後から発覚した
契約不適合責任が認められると、買主は売主に対して、修補(埋め戻し工事など)の請求、代金の減額請求、契約の解除、損害賠償請求のいずれかを求めることができます。
契約不適合責任は、過失の有無にかかわらず問われる可能性がある責任です。「自分は知らなかった」という主張だけでは、責任を免れない場合があります。だからこそ、売却前の現地調査や、近隣・親族への聞き取りで、井戸の有無を確認しておくことが重要です。
井戸を埋め戻す際は、単に土を入れて塞ぐだけでは不十分です。一般的には、次のような手順で進められます。
- お祓い(井戸神様への儀式):地域や家庭によっては、埋め戻し前に神主による祈祷を行う慣習があります
- 排水・清掃:井戸内の水を抜き、内部を清掃する
- 通気管の設置:地中のガスや空気を逃がすため、竹筒やパイプを通気管として立てる
- 埋め戻し:砕石や土砂で、空洞ができないよう丁寧に埋める
費用目安数万円から十数万円程度(井戸の深さや直径、立地条件によって異なります。業者や地域差があります)
井戸に関連して、もう一つ気をつけたいのが「心理的瑕疵」です。
心理的瑕疵とは、物件そのものに物理的な欠陥はなくても、過去の事件・事故など、買主が心理的に嫌悪感を抱く事情があることを指します。
井戸が絡む代表的なケースとしては、次のようなものがあります。
- 過去に井戸への転落事故や、水難事故があった
- 井戸を用いた事件性のある出来事があった
このような事情がある場合、告知義務の対象となる可能性があります。国土交通省が公表している「不動産取引における心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」では、告知が必要な場合の考え方が示されています。詳細な該当性は個別事情によるため、該当しそうな事情がある場合は、必ず不動産会社や弁護士に確認してください。
また、井戸は神仏のように扱っている方も少なくないので、そういう意味でも井戸の取り扱いには十分配慮をもっておくことが望ましいです。
- 井戸は放置せず、埋め戻しの要否も含めて早めに確認することが大切。
- 「知らなかった」では済まされないのが契約不適合責任。
- 過去に事故等があった場合は、心理的瑕疵として告知が必要になることもある。
- 迷ったら、まず専門家に現状を確認してもらうことが、トラブルを防ぐ第一歩。
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